ヘンダーソン夫人の贈り物

映画「ヘンダーソン夫人の贈り物」を観てきた。一昨日の「クイーン」の前にスティーヴン・フリアーズ監督が撮った映画。これも実話に基づいているらしい。
第二次世界大戦前の時代、大金持ちの夫を亡くしたヘンダーソン夫人は、これからの未亡人生活をいかに過ごすか考えた結果、劇場を買い取ってそのオーナーになった。そして、(最初は順調だったが)やがて経営の傾いた劇場を再び繁盛させるため、女性の裸を見せる舞台を始めることにする・・・という話。
前半では、自分の雇った支配人とケンカして劇場に来ることさえできなくなった彼女が、あの手この手で支配人の裏をかこうとする笑えるエピソードが主だが、後半では戦争が始まりロンドンも空襲されるようになり、雰囲気は一転する。それでも彼女たちは劇場を閉めなかった、という話。
ジュディ・デンチ演じる主人公のヘンダーソン夫人が最高だ。大金持ちで世間知らずで、我慢することが嫌いで、言いたいことをズケズケ言う。しかも簡単にはへこたれない。だからとっても困ったバアさんなんだが(笑)、人に惑わされず自分に正直でかわいい人だから、観ていて痛快だし憎めない。彼女と、彼女の未亡人仲間で同じく大金持ちのおばあさんの二人が会話するシーンには、遠慮というものが一切なくて、見る度笑いが止まらなかった。歳をとったら怖いものがないってこともあるのかな。いい歳してあんなふうに言いたいことを言っても全く頓着しない友人がいたら、人生は最期まで楽しそうだ。
「クイーン」に比べるとこちらは小品といった趣だが、これはこれでとても面白くて心温まる作品だった。そして、何者にも臆さずマイペースなヘンダーソン夫人には勇気と元気をもらえた気がする。誰もがあんなお婆さんになれるわけじゃないし、年寄りがみんなああだったら困るけど(笑)、一人くらいいたら楽しいよね。
ラストで、彼女は1944年に亡くなったということが文章で示されるのだが、ということは、彼女は終戦に立ち会わずに亡くなってしまったわけだ。生きたいように生きたのだろうけど、戦時中も自らの方法で戦った人なのだから、勝ったところを見せてあげたかったな*1と、ふと思った。


この映画のオープニングのアニメーションがとっても洒落ていて素敵で、久しぶりにOPからワクワクした。誰が作ってるんだろう。

*1:と、未来の人間が言っても仕方ないのだが