ドリームガールズ

映画「ドリームガールズ」を観てきた。
本格的大型ミュージカル映画ということだったので楽しみにしていったのだが、正直言って、なんでこれが賞レースにからむのかわからない。
シカゴの脚本家、ビル・コンドンが監督をしているのだが、ミュージカル映画としてはどうにも中途半端。時々、歌をただの画面展開にかぶせるだけというシーンがあったりして、ミュージカル映画といっている作品でこういう歌の使い方をするのはどうだろうと思わされた。少なくともミュージカルファンは納得しないだろう。ミュージカル映画というのは、歌だけでなく、実は肉体性が必要とされるものなのだ*1。確かに、何人かでがなるように台詞を歌うシーンもあるのだけど、ねぇ。
演出にも安易な点が見受けられたし、話も表面的で深みがない。まあ、この時代の音楽業界、特にモータウンの内幕モノとして観る分にはおもしろいし、物語が展開する十数年の間のファッションと音楽の流行の変遷が伺えるので、その点では興味深いけれど。
ただ、この映画の一番のガンは、この映画で一躍有名になった女優(?)ジェニファー・ハドソンだ。はっきりいって彼女は下手。登場したばかりの時は、演技でそうしているのだろうかと思うこともできたのだが、結局最後まで、彼女の演技は観た目通りの「どんくさい娘」のままだった。十代の娘から始まり、最後には9歳の娘のいる母親にまでなっているのに。彼女の素人臭い演技が出る度に、作品の雰囲気が崩れる感じがした。目線一つ取っても、雰囲気がプロじゃないんだよね。シカゴのクイーン・ラティファを見習ってほしいものだ。彼女も演技の分野では新人だったはずだが、全く映画の雰囲気を壊していない。ま、彼女は「音楽分野」では十分プロだったわけだが。
ハドソンの歌がうまく迫力があるのは確かだし(深みが感じられないので私は好きではないが)、それ故彼女のこの映画への貢献は疑いようもないけれど、演技については、素人にしてはがんばったね、新人賞ならあげてもいいかな程度。どう大目に見ても、アカデミー賞をもらうような演技ではない。アカデミー会員というものは、存外雰囲気や話題性に弱いのか、もしくはUIPがよほど金をばらまいたのか*2
どうもアカデミー賞の特に女優賞は、話題性重視であげちゃいましょうみたいな雰囲気があるような気がするが、その中でも最低の部類ではないだろうか。

*1:別にそれは、踊らなければいけないという意味ではない

*2:と言っても、外国記者で投票するゴールデングローブ賞も受賞しているのだから、みなよっぽど目が節穴なのかと思ってしまう