ガーデン (イスラエル/2003/ルーシー・シャツ、アディ・パラシュ)

イスラエルのテルアヴィヴで売春をして生きている、ニノとドゥドゥという二人の未成年を追った映画。
二人ともアラブ系(ニノはパレスチナ人)。彼らの過去は、家族の暴力にレイプ、そして家出・・・と、凄惨を極めている。そして、先の見えない人生を生きるために道ばたに立っている。
そういう青年達がここまで心を開いて、こういう映像を撮らせてくれること自体がすごい。よほど彼らにとって信頼のおける人たちだったということなんだろう。
彼らは好き勝手に生きていてちゃらんぽらんだが(ニノは途中で少年院に送られるが、あっけらかんと「脱走してきた」なんて言って戻ってきたりする)、深い友情で結ばれていて、お互いのことをすごく真剣に心配している。その言動からは、二人が実はまともな社会的意識をもって物事を考えられる賢い青年であることが見て取れるし、二人とも見ているとどこか憎めない、魅力をもった人物なのだ。
麻薬も売春もなければ、そして普通に学校に行けていれば、普通の優しい青年達だったかもしれない。
そんな彼らが、それでも出口の見えない生き方をしていることがもどかしく、哀しい。
観終えると、ここに出口はあるんだろうかと暗い考えになってしまったが、質疑応答での監督の話によれば、二人はその後ちゃんと更正プログラムを受けているとのこと。そういう救済措置があることは一つの救いではある。


イスラエルでアラブ人があからさまに差別されることを、これを観て初めて知った。実は、もしかすると現在公に最も人種差別の激しい国かもしれないな<イスラエル
そして、パレスチナ人が許可なくイスラエルに入れば不法入国になることも。そっちが侵略してるくせに、入ってきたらいけないんだ。へぇ。
かつて虐げられた人々がつくった(現在もその記憶をもっているはずの)国が周囲に対して強攻な国策をとっている。そのイスラエル人のメンタリティというのは常々気になるところではあったのだが、今回もふとそのことを考えた。