ローレライ

LORELEI

ローレライ」を観てきた。
邦画でこういうスケールの映画を作ろうという意気は買う。がんばっているとは思うのであまり貶したくはないんだが、脚本がメタメタだ。
設定や話の筋がアニメっぽいのは別にかまわないが、とほうもない話をそれっぽく見せるためには、それ以外の部分で細かく「本当っぽさ」を積み重ねていくしかない。逆に言えば、細部がいい加減だと全体がうそくさく見えてしまう。
特に時代感は大切にしてほしかった。ただでさえ荒唐無稽な話なんだから、そこがおろそかになるとただのコスプレSFになってしまう。例えば、妻夫木と佐藤隆太の若者二人の会話がまるっきり現代のノリなのが気になったし、何度も原子爆弾と言われていたのも気になった。当時はまだ新型爆弾と呼ばれていたんじゃないのか。
ストーリーに関して言えば、例えば、瀧が心変わりする部分の描写が唐突でよくわからない。国を壊滅させるかもしれない裏切りという重い決断をする理由が、一人の人間に恩があるからというただそれだけというのにもリアリティを感じなかった。それにそもそも、米軍にローレライを渡す替わりに・・・という取引がよくわからない。これがもし、ローレライを渡す替わりに爆撃を中止させる、というのならわかる。ローレライが交換条件になるわけだ。しかしこの話では、ローレライを渡そうが渡すまいが爆撃されるという計画は変わらないわけだろう。ならば、ローレライを渡す必要なんて始めからないんじゃないのか。いや、もしかしたら自分の頭が悪くて理解できてないだけかもしれないけど。
一事が万事そんな調子だから、観ていて気になってしかたなかった。
それに、樋口監督はドラマを描くのも下手なんだな。細部をつめないまま役者にそれっぽい台詞を言わせても、台詞が浮いてしまって恥ずかしいだけだ。これがもしアニメだったら、決め台詞いっぱいの話として楽しめたかもしれないが、アニメと実写では求められるリアリティの度合いが違う。
たぶん、潜水艦とローレライシステムという設定を描きたかっただけなんだと思うが、だったらなおさら、細部のリアリティはつきつめてほしかった。
ついでに言うと、音楽がベタでださい。明朝体系のいかにもありふれた形のフォントも安っぽい感じを与えていた。意外とそういう部分で、金がかかっている映画かどうかという印象は決まるものだ。作っている人は気にならなかったんだろうか。