悪い男

「悪い男」を観てきた。こないだ「春夏秋冬…そして春」でベニチアで賞を獲ってたキム・ギドク監督の作品。地元では今日一日だけの公開だった。
一目惚れした女に無理矢理キスをしたやくざの男が、その後も彼女をストーキングして、あげくのはてに彼女を騙して自分が牛耳ってる売春宿に入れてしまう。そこで仕方なく売春をすることになった彼女と男の関係を描いた話。
男と彼を憎む女の冷たい関係が、寂しさの中でいつしか憎みながらも離れられない、依存しあうような形に変わっていく。痛く、冷たく、寂寥感の漂う作品だ。女の描写などは都合よく描かれてると思わなくもないし、好きなタイプの映画ではないんだが、映像が力強くて美しく、最後まで惹きつけられてしまった。
キャストがみないい目をしている。ヒロインの人を射るような目と、物言わぬ(ラストの方で実は変な高い声だったことが判明したが(^^;)男の姿が印象的。
観ている間ずっと、冷たい空気が売りの単なるやくざ映画(それはそれでいいんだが)かと思っていたんだが、最後の方で、そこに風穴を明けるような瞬間がきた。そして冷たい空気が少し優しく変わった。そこで観客は知るのだ、ああそういう事だったのか、と。この構成は、うまいなあ。
だからその空気を大事にして、ラストは砂浜のシーンで終わりにしたほうがよかったんじゃないかなあ。そのあとはどうなったかわかりませんよ、というふうに。その方が、この話の鍵となっている写真や以前二人が見た女のエピソードとの整合性もつきやすいし。そんな美しい終わり方を求めるのはセンチメンタリストすぎるだろうか。
あのラストシーンのせいで、作品になんだか一気にくされ縁的な泥臭さが出てしまったような気がして、ちょっと残念なのよ。


本編の前に「オールドボーイ」の予告編を見た。こちらもスタイリッシュでおもしろそう。