スパニッシュ・アパートメント

L’Auberge espagnole

スパニッシュ・アパートメント」を観てきた。
私は期待しすぎていたからだろうか、ちょっと期待はずれだった。
フランス人がバルセロナに留学して、ヨーロッパの様々な国から来た学生達とルームシェアリングするという話。映画の最初の方で、ベルギー人と地元カタロニア人の学生がEUアイデンティティといった言葉を持ち出してちょっとした議論をするところなどはいかにも今の大ヨーロッパ圏EUを象徴していそうな場面で、おおっ、おもしろくなりそう、と思わされた。しかし実際主人公のアパートでの共同生活が始まってみると、そういった描き方はかなり希薄になる。何かで読んだこの映画のレビューには、アパートの住人は今のヨーロッパを表しているというようなことが書かれていた。たぶんそうなんだろう。少なくとも監督はそのつもりで描いていると思う。が、それにしては各人の描き込みが足りなく、全体的に話が薄い。そのくせ、アパートの住人ではないアメリカ人男だけははっきりと「バカ」という扱いをされているのもなんだかなぁ、という感じだ。
ラストもはぁ?と言いたくなる展開。ああいう決断をするためには、それまでの段階として少なくとも悩んでいるという描写が必要だろう。それがなくていきなりあれでは、あんたスペインまで行って何学んできたんだよ(勉強のことを言っているのではなく)と言いたくなる。甘ちゃんの主人公の感傷で話をまとめられてしまって、なんだか少しだまされたような気分だ。
全体的に、おもしろそうな素材は揃えてあるが、それを生かし切れていないし各エピソードが有機的に繋がっていないという印象を受けた。編集に凝りまくりの映像は、スタイリッシュを通り越して野暮。見た目ポップではあるけど。
ただ、若者達の共同生活、青春群像ものとしてはまあまあ楽しめる。アメリカ男と浮気しているイギリス娘のところに彼氏が訪ねて来たとき、住人みんながかけつけて浮気を隠そうとするところなど、ハラハラできておもしろかったし。ま、そのくらい。