アップルシード

APPLESEED

アップルシード」を観てきた。
正直言って大して期待していなかったんだが、映像としては思いの外楽しめた。アクションにスピード感があり、動きもカメラワークもセンスがよくてかっこいい。この点だけ見れば予想を遙かに上回る出来だ。
モーションキャプチャーしたCGをトゥーンシェイドでアニメ絵風にしたキャラクターは表情に乏しく、しかも周りがリアル指向なのに顔だけアニメ絵なので最初はかなり違和感を感じたが、これは見ているうちに慣れてそれほどは気にならなくなった。ただし女性だけ少女漫画のように目が大きくて胸が強調されたビジュアルになっているのはどうにかして欲しかったが。特にHITOMIはあの格好で妙にクネクネ動くし声は可愛い系なので、エロアニメかと思うような気持ち悪さがあった。そういう観客ねらいなのか?
表情の演技ができないというのはアニメにとってはかなりの欠点なので、これは今後の課題だろう。ただ貼り付けただけのような髪の毛の質感も含めて。
問題は脚本の方で、設定は多分にご都合主義的だしドラマ部分は陳腐。後半は展開が予想できてしまうような白々しい話が続くので、見続けるのがちょっとつらくなってしまった。監督はストーリーを追っていくのにいっぱいいっぱいといった感じで、物語に緩急がつけられていないし、キャラクターの深い心理状態まで描けていない。
一番気になったのは、主人公自身の意志が見えないところ。話の中であれだけ論議の的になっているにも関わらず、彼女にはアンドロイドと人間の融合社会に対する希望も疑問も葛藤もなく、無邪気に亡き父母の意志だから、アンドロイドの友人の命が危ないから、という行動原理で動いているように見える。それではただのお人形さんではないの。まあそもそも、この映画の中ではアンドロイド嫌悪派=悪であり、それと人間絶滅派(元老院)以外の人たちからは人間とアンドロイドの融合社会はユートピアとして何の疑念もなく受け取られているらしいことにも違和感を覚えるのだが。
同じ作者の原作を元にしているから比べてしまうが、人間と人形の境界について云々やっていた「イノセンス」と比べると、その葛藤がない分、こちらはずいぶんと単純明快なものだという印象をもった。
と、いろいろ悪く書いてしまったが、実はそれでも結構好意的に見ている。欠点は多いが、勢いももった作品だと思うからだ。戦闘シーンのアクションなどでは新しい表現の可能性を感じたし、CGアニメーションとしては低予算の作品だと聞いているが、それでも演出によってこれだけできるという一つの方向性も示しているように思えた。
既に2の製作が決まっているそうなので、次ではもう少し改良されて発達したビジュアルが見られることを期待している。それに脚本ももう少し練ったものにしてほしい。