マグダレンの祈り

THE MAGDALENE SISTERS

マグダレンの祈り」を観てきた。アイルランドの女子更正施設だったマグダレン修道院に入れられた女性たちの話。
その女性達は、いとこにレイプされたとか(男が責められるならわかるけど!)、未婚の母だとか、孤児院にいるのに外の男性たちと口をきいていたとか、本当になぜ、というような理由で、刑務所のような収容所に入れられるのだ。私語は禁止、シスターには絶対服従、逆らったり脱走を企てれば罰が待っている。そこでは人間性を剥奪されてただ労働するだけの存在になる。いや、宗教的罪というとてもあいまいなものを基準に収容しているためシスターは好き放題にし、いつ出られるかもわからないという意味では刑務所よりずっと酷いかもしれない。しかも家族が率先して連れて来るのだから、ここにある闇は深い。
服従する存在をもってしまうと人間性が変わってしまうのだろうか、それとも、宗教という後ろ盾が人としての一線を越えさせてしまうのか。シスターたちには、最後まで微塵も慈悲という心があるようには見えなかった。修道院に大型洗濯機が導入されたとき、これで女性達の重労働の一つだった洗濯仕事が軽くなるかと思いきや、シスター達は空いた時間に彼女たちに何をさせるかというと、素っ裸にして横一列に並べて胸や陰毛の品定めなどしているのだ。なんて屈辱だろう。そして泣きそうになる女性を笑いながら見ているんだから、あれはもうヒトじゃないね。悪役でもめったに憎いと思うことはない私だけど、このシーンではマジであのシスターを殺したくなった。
予告編からはもっと昔(第二次世界大戦前くらい)の話だろうと思っていたのに、実際に見てみるとそれよりはずっと最近の話(映画の話の開始時は1964年)だったのでそれだけでも驚いたのだが、ラストにこのような修道院アイルランドに1996年まで存在したという字幕が出てきてドーンと落ち込んでしまった。
宗教、カトリックが悪い、と単純には言えないだろう。ただ、社会がカトリックという名の下にそれを許して積極的に荷担してきた罪は重い。