イノセンス

INNOCENCE

イノセンス」を見てきた。うーん、微妙。うまくは言えないのだが、話が前作より薄くなったような。

格言や蘊蓄に彩られ、抽象的な言葉で多くが語られるので一見難解に見えないこともないのだが、できればもっとつっこんだ描写が欲しかった。観客が見ているうちに自分の存在性にすら疑問をもつ感覚になって恐怖すらするような、そんな感じ。それと生理的な気持ち悪さ。結局のところそういう表現こそがこの映画に求めるモノだったりするのだから。しかし、エンターテインメント性を強くした、と公開前にプロデューサーが語っていたように、アクションシーンが増え、相対的に物語のテーマ性が弱まってしまったように思う。かといってアクションシーンが度肝を抜くほどすさまじいわけではないので、どうにも中途半端な印象が拭えない。本当にハードSFらしくてゾクゾクする感覚を覚えたのは、トグサがハッキングされた情報戦とその後の部分、くらいだな。


しかし、これを単純につまらないとも言えないというか、貶す気にはなれないような魅力もまたあるんだなー。まず、一応話が完結していることは評価したい。(笑)上映時間が99分しかなくて、しかも格言のやりとりやらで余計な時間をとっていたもんだから、物語が佳境にさしかかるにつれて、ここで終わったらどうしよう、肝心の標的の工場への突入前に終わったら・・・と気が気ではなかったのだ。「AVALON」の悪夢再びか、と。盛り上がっていく物語とは別のところでドキドキしてた。(笑)だから、ちゃんと終わってけりをつけたところまで描いたことには一応満足している。


ビジュアルも確かにすごい。プロダクションI.Gさすが、である。この表現は今のところは最先端の一つであろうから、一見の価値はあるだろう。
ただ、今回見ていて感じてしまったのは、もうこの手の大作アニメーションはCG抜きには語れなくなってしまったのだなということだった。劇場予告であった「ハウルの動く城」や「スチームボーイ」の映像でも、その短い時間の中でCGを使っているであろう表現がいくつか見られたし。しかし、いわゆるセルアニメ(今はセルは使っていないので正確には違うのだろうが)にCGを合わせた表現はどうも苦手である。セルのアニメはどんなに「リアル」になってもあくまで絵であるのに対して、CGアニメーションは本質的にリアルさを指向する。そのなめらかな動きやビジュアルはセルアニメのそれとは乖離しているように見えて、両者が合わさるとどうにも違和感を感じてしまう。セルアニメで育った古い世代だからだろうか。今回もアニメを観に来たつもりだったのにCGバリバリの映像が多くあって、ちょっとがっかりしてしまった。もちろん、CGでしかできないような本当にきれいな表現がいくつもあったし、すごいCGだということは認めるけれど。


あとは、中身が薄いといいつつも、情報に溢れた99分間の映像体験ということそれ自体、悪いものではない。台詞、ビジュアル、音響、音楽、それらが過剰に頭の中に入って処理されていくような感覚は、なかなか体験できるものではないだろう。それだけでも見た甲斐はあった。しかしだからこそ、もっと中身があって複雑だったらもっとよかったのに、惜しい・・・と思わずにいられないのだが。