グアンタナモ、僕達が見た真実

自分、そして友人の結婚式に出席するためにイギリスからパキスタンにやってきたパキスタン系イギリス人の若者達。ちょっとした興味から隣国アフガニスタンに足を踏み入れたが、そこで戦火に巻き込まれ、逃げ回るうちに米軍に「タリバンの一味」としてつかまってしまう。その後グアンタナモに移送され、何も知らないのに非人間的な環境で尋問を繰り返され、数年後に無実が証明されて釈放される。
ということを、証言とドラマで綴るノンフィクション・ドラマ。
でも実は全て俳優が演じていて、(本人らの証言や事実を元に)映像も一から作られている、フェイク・ドキュメンタリー的作りの映画である。


共同監督であるマイケル・ウィンターボトム監督が同じく監督した、アフガン難民の少年がイギリスに渡ろうとする映画「イン・ディス・ワールド」の作りを、証言シーン等を入れることでさらに推し進めた感じ。限りなくドキュメンタリーっぽいんだが、ドキュメンタリーでは撮り得ない映像がふんだんに入っている。
そういう映像を通して、観客に登場人物達の苦痛を追体験させ考えさせることがこの映画の主眼だろう。まるで本当に目の前で起きているような映像は、その辺の戦争映画と比べても遜色ないくらい迫力があって怖い。そして観ているうちに、米軍の対応や戦争に対する米国の姿勢そのものに疑念がふつふつと湧いてくる。そういう映像世界を意図的に作り出しているという点で、この映画は本当によくできてるし、観て損はない映画だと思う。
けれどその特殊な作りから、劇映画としての評価がしづらい作品でもある。「イン・ディス・ワールド」のときはまだ劇映画として感動したけれど、この作品ではちょっと違うところまできてしまった感じ。この感じは、描かれるものの種類は全然違うけれど、「エレファント」を観たときのそれと似ている気がした。


こういう地味な社会派映画だと、普通は、それを告発するために撮ろうとする「社会派」映画監督が作る低予算な映画という印象があるが、この作品はたぶんかなりの、つまり普通の娯楽映画と同じくらいの予算がかけられていると思う。だって、戦闘やタリバンやキャンプ・デルタの映像を一から作り出しているのだから。こういう映画でも資金が出るところが、さすが、社会派映画からエンタメSFまで幅広く監督するマイケル・ウィンターボトム。ちなみに、アフガニスタンのシーンの一部はイランで撮影しているらしい。