善き人のためのソナタ

善き人のためのソナタ」を観てきた。
1984年、東ドイツの秘密警察シュタージ局員で盗聴や尋問を行っている主人公が、ある劇作家とその恋人の女優を監視するよう命じられ、さっそくアパートに盗聴器を仕込んで盗聴を開始する。が、彼らのやりとりを聞いているうちに次第に主人公の心に変化が訪れ・・・、という話。今年のアカデミー賞外国語映画賞受賞作品。
ちょっと冗長な感じはしたが、悪くはなかったと思う。
ただ、想像していたのとはちょっと展開が違っていた。この盗聴の一件が何か大きな事件につながってそこで終わり、もしくは壁崩壊辺りで終わりか。くらいに思っていたら、この映画にはまだまだその先があったのだ。そしてそれが、この映画のきれいな落としどころになっている。
ほぼ現代と言っていい時代の社会主義国家の陰惨な部分を描いた映画でありながら、最後は「ちょっといい話」として終わる。
あのラストはいいラストだと思うし、映画の〆にもなっていてよかったと思う。ただ、なんとなく、「ドイツ人にとっていいラストなんだろうな」という思いが頭に浮かんでしまった。
壁崩壊からまだ20年経っていない。シュタージについての記憶には未だ生々しさがあって、まだ直接的には触れたくないという人が多くいるのではないだろうか。そんな中で、「人知れず生活している人の中に(シュタージにいながら)芸術の守護者がいた」という物語は、人々にある種の救いと安堵を与えるもののように思われる。もしくは、劇的な事件に発展しないそういう静かな終わり方の方が、ドイツ人当事者にとってリアリティのあるものなのかもしれない。
この映画を観た他の人に、その辺どう思うか聞いてみたいなあ。