「沈没の前に」と「Dear Pyongyang」

山形国際ドキュメンタリー映画祭のアンコール上映会に行ってきた。
でも人いなかったねー。大賞を獲った「沈没の前に」にはそこそこ入っていたが、「Dear Pyongyang」ではびっくりするくらいがらがらだった(タイトルから政治思想的として避けられたか?)。映画祭で賞を獲った作品でも再上映ともなると地味なもんだ。地元で観たいっていう人少ないのかな。
「沈没の前に」は、中国で大規模なダム建設計画でダム湖に沈むことが決定している街に住む人々の、撤退・移住に関するあれこれ(ほとんどがいざこざ)を捉えた作品。村一個なんてものじゃなく、でかいビルのあるような都市部の街までをも何個も沈めようっていうんだから、さすが中国はやることの規模がでかい。ビルを次々に爆破していく映像のダイナミックさには圧倒されてしまった。
あれだけ大規模だと誰からも文句が出ないようにするなんて不可能だね。国の決定と住民の苦情の板挟みになっている役人に同情してしまった。
「Dear Pyongyang」は、父親は若い頃から活動家で朝鮮総連の幹部、三人の兄たちは若い頃に北朝鮮に渡ったという筋金入りの在日朝鮮人家庭に生まれた末娘である監督が、その思想的な部分に矛盾と違和感を感じながらも、家族を愛し、父親の姿を見つめていく映画。
監督の感じる(北朝鮮支持者の抱えるダブルスタンダードとでも言うべき)矛盾、というのが今作の一つのテーマではあるのだけど、それと同時に、これは父と娘の物語でもある。ラスト、それまでかたくなだった父親が娘に理解を示すようになってハッピーエンド、と思われた直後に父親が病気になり、映画はたぶん監督が予期しなかったであろう方向に進むのだが、そのときの父と娘のやりとりに胸打たれた。
Special Thanksにおすぎの名前が。彼(というか彼女と言った方がいいのか・・・)は、この、日本ではなかなか普通に流すのが難しいであろう内容の作品と監督を支持し応援し続けたらしい。映画祭の時も、監督のためにわざわざ応援にかけつけてスペシャトークをしたことが地元紙の記事になっていた。結構いいとこあるじゃん。