ヴェラ・ドレイク

上にも書いたとおり特に後半が怪しくて、ラストなんて最後の最後を見逃してしまったようなアホな自分なので何か言う資格なんてないんだけど、とりあえず。
映画は、まだ中絶が法によって禁止されていた50年代のイギリスが舞台だ。そこで家族にも知らせずに秘かに、望まない妊娠をしてしまった女性達の堕胎を行ってきた初老の女性ヴェラ。彼女はそれまで何十年とそうしてきたのだが、あるとき、中絶を行った少女がのちに体調を崩して病院に運ばれたことをきっかけにして秘密がばれ、逮捕され、裁判にかけられてしまう、という話。
だが、テーマはおいておくとして、私はそんなにいい映画だとは思えなかった。「秘密と嘘」もそうだったけど、マイク・リーの映画は、世間で評価されているわりにはなんかおもしろくないんだよな。少なくとも私にとっては。静かに現実の重さを見せようとする演出が自分の好みに合わないんだろう。
この映画のヴェラやその家族はとても善良だ。上流ではないが極めて貧乏でもなく、きちんと働き、ごく普通の暮らしをおくっている善良な人々。
監督は、この「善良」というポイントをかなり意識して映画を作っているように見える。そういう普通の人が善意から行ったこと(そして、助けられるのも普通の女性たち)で逮捕されていたのだ、と言いたいんだろう。
そういう意味で、ヴェラ役のイメルダ・スタウントンの演技はうまい。逮捕されると、罪は認めながらも、家族のことを思って震えておどおどする、特に強くはない普通の女性を見事に演じきっている。ただ、私はそれを見てヴェラの様子にイライラしてしまったのだが。監督は「普通である」ことを見せようとしすぎだ。
やはりマイク・リーは自分に合わない。