ミュージック・クバーナ (ドイツ/2004/ヘルマン・クラル)

これはコンペではなく、特別上映作品。
「『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の歌手ピオ・レイバが、偶然あるタクシー運転手と出会い、彼と共にキューバの若いミュージシャンを集めてバンドを結成する。そしてツアーに出かけて東京でライブをする」
という筋立てだけが事前に作られ、実際にライブやツアーをし、各ミュージシャンの語る言葉は彼ら自身から出てきた本物、という、フィクショナルドキュメンタリーとでもいうべき映画。
つまり、タクシー運転手や彼とピオ・レイバのやりとりだけが丸々フィクションなんだな(ピオ・レイバはなかなかの演技上手)。
ブエナ・ビスタ〜」のヴィム・ヴェンダースから、監督の元に「キューバの若手ミュージシャンたちの映画を作らないか」というオファーがあって製作された映画で(エグゼクティブ・プロデューサーの一人がヴィム・ヴェンダース)、実際作品も、あの映画をかなり意識したっぽい作りになっている。
ライブは文句なくいいと思う。キューバは若手ミュージシャンも素晴らしいんだよ、ということは伝わった。
ただ、映画としては、「ブエナ・ビスタ〜」の成功にのっかった出来の悪い二番煎じの感が否めない。
映画祭でのウケはかなりよかった(質疑応答で質問するとき、最大限と思われる賛辞を送る人多数)ようだが、私にはこの中途半端なフィクションがどうにも気持ち悪くて。そのせいで、ライブも作り物めいて見えて完全にはノリ切れなかった。「ブエナ・ビスタ〜」だって似たようなものだろうが、見せ方がもっとうまかったと思うんだよね。
一昨年この映画祭の特別上映で観た「モロ・ノ・ブラジル」が素晴らしい作品で(一般公開で来たときも観に行ってやはり感動した)、今回も似たような感じを期待していたのだけど、残念かな、こちらはあれに比べて薄い。
監督がでてきての質疑応答で聞けた裏話はおもしろかったけどね。
映画は日本での配給が決まっていて、東京で3月に公開されるそうだ。