あんにょんキムチとチルソクの夏

「あんにょんキムチ」と「チルソクの夏」を観てきた。
今年10月に開催される山形国際ドキュメンタリー映画祭のプレイベント上映会があったのだ。今回は韓国特集。


「あんにょんキムチ」は在日韓国人モノのドキュメンタリーとしてはかなり有名で、自分もタイトルだけは知っていた。だからなんとなく難しいものを想像していたのだけど、これが予想外にゆるい作品だった。
お世辞にも「上手い」映画ではないんだが、その分、監督の伝えたい、表現したいという思いが伝わってくる作品になっている。監督の青さまでをさらけだしちゃってるのが、観ている者の共感を誘う。突如在日の血に目覚めたらしい兄(監督)の熱さと、妹の脱力したナレーションの組み合わせもいい(兄妹仲良さそうでいいなあ)。在日問題が〜などと声高に言うのではなく、うちの家族は〜ということを適度なユーモアを交えつつ描いているのがおもしろかった。
上映後に監督の挨拶があったのだけど、曰く、海外にもっていって上映すると、移民の多いアメリカや香港では普遍的な家族の映画として捉えられるのだそうだ。なるほど。日本ではこういうテーマだと問題意識が先にくるために必要以上に構えて見てしまうけれど、アメリカ的な視点から見れば全然別のものに見えるのかも。これは、とても興味深い見方だと思う。
対して、韓国で上映すると怒られることも多いそうな。これまた納得。(笑)


チルソクの夏」は、1977年、下関と釜山の間で開かれていた高校生の交流陸上大会で出会った日本人の女の子と韓国人の男の子の恋、それに、女の子と友人達との友情を描いた映画。チルソクとは韓国語で七夕の意味。7月7日に開かれる大会と、その大会で1年後に再会することを約束して、海を隔てた二都市に住む二人の姿をかけている。
これが、今時珍しいくらい古典的な恋愛映画だった。こんなこと言うのもなんだけど、双方の親に反対されているし簡単に会うこともできない、そしてそれぞれの属するグループには社会的文化的な溝がある、というシチュエーションは、絶好の恋愛装置やね。劇中で言及されているロミオとジュリエットのように。
はっきりいえばベタベタなんだけど、そのベタさがよかった。女の子達の、瑞々しく、心にも体にもぜい肉のなさそうな姿や演技も爽やかでいい。って、まるっきりおばさんな感想だけど。
ただ、楽しんだ上で書くけど、演出や編集が素人みたいだ。ラストは長すぎるし、競技会での止め絵も意味不明。それに、韓国人の男の子が言う台詞は、監督の言いたいことをそのまま言わせているみたいで観ていて萎えた。この作品は恋愛映画としてはいいが、韓国と日本というテーマでの描き方は深みに欠けている。
この監督は他にも作品を撮ってる人だろうに、と思って調べてみたら、監督の佐々部清って、あの「半落ち」を監督した人だったのか・・・。あれも編集の酷い映画だったけど。
あとは、低予算なのはわかるけど、せめて服装くらいは当時のもので揃えて欲しかった。一部は古着屋*1で調達したらしい当時っぽい服装もあったが、釜山で女の子4人が抜け出すときの恰好なんてまるっきり現代のものなんだもの。70年代の登場人物が、当時はあり得ないカットのジーンズなどを履いているのを観るとガックリきてしまう。

*1:クレジットに入っていた