マスター・アンド・コマンダー

マスター・アンド・コマンダー」を観てきた。*1
コケただのつまらないだのと悪い評判を多く見ていたのでどうかと思っていたら、非常におもしろかった。
操舵術の巧みさ、突然の嵐、それと格闘する肉体のダイナミックさ、束の間の休息、友情、上官と水兵の諍い、戦闘(しかも砲撃だけじゃなく船上での闘いもあり)、それにガラパゴス諸島で新種の発見、と、海洋モノに必須な要素が盛りだくさん。しかもイギリス艦だから、休息時にはアイリッシュ・ダンスを踊るし、上官は(この時代*2だから)縁の高いソーサーのカップでお茶を飲む!これで萌えないわけがないじゃないの。(笑) これをつまらないという人は、見方をどこか間違ってるんじゃないだろうか。
確かに驚愕するような話はない。けど、娯楽のツボをついたような演出であり、なおかつドラマがきっちりつくられている。そして無理矢理な演出がないのが一番よかった。最近観た娯楽大作の中では一番好きだな。
いかにも頼りがいのある男という感じの艦長を演じるラッセル・クロウ博物学が好きな船医を演じるポール・ベタニーが好演。映画ではこの二人の友情もいい味になっている。ラストの二人のシーンも心憎い演出で、この二人の話をもっと観てみたい、という気にさせられた。ポール・ベタニーは「ドッグヴィル」での人間的な弱さのある青年が、(短い髪型とメガネという小物があったにせよ)理知的で強い船医に変わっていて感心した。くせ者系が似合う人だと思っていたけどこういう役もできるんだな。やはりいい役者だ。この人好きなんだよね。そういえばこの役者二人はビューティフル・マインドでも共演してるな。あの映画は嫌いだけど、私はあの映画でポール・ベタニーを知ったんだよなあ。
また、サウンドがとてもよい。冒頭で船内が大揺れになるシーンでは後ろ左右からガタガタと音がして、(皮肉にも)シネコンの中で一番小さいスクリーンだったため左右の音が近く、本当に船内にいるようなリアルさを感じた。もちろんデジタルサラウンドでうまく効果を出している映画なんていうのは珍しくないけど、この映画ではここ最近では感じたことがなかったくらい際立った立体的な音になっていて、ちょっと感動した。こういうのも正しく映画的な体験といえるんじゃないだろうか。もし家でDVDを5.1chサラウンドで観るとしても、映画館と同じような密室感と迫力は感じられないだろう。だから、この映画をちゃんと鑑賞したかったら打ち切りになる前に映画館に観に行くことをお勧めします。コケてるらしいからもうすぐ終わっちゃいそうだし、行くなら急いでどうぞ。

*1:チラシの「本年度アカデミー賞最有力!」という文句がイタい。宣伝とはいえ、んなわけないのはわかっていただろうに。それ以外でもこのチラシはいろいろとイタい

*2:彼らはナポレオン配下のフランス艦と闘っている