マリー・アントワネット

マリー・アントワネット」を観てきた。
ロスト・イン・トランスレーションについては、まあ悪くない、結構好きかな、程度だったのだが、この作品についてはソフィア・コッポラ絶対支持!今年観た映画はこれでまだ5本目なのだが、その中では個人的には一番よかった。
派手な歴史絵巻ではないが、一人の女性にフォーカスを当てて描こうとする姿勢においてとても誠実な作品だと思う。それ故に、少女の孤独、恋、母や王妃としての強さというのものが素直に伝わってくる。特に、輿入れしたときの孤独の表現がとてもリアルで、この監督はそういう感情を本質的に「わかっている」人なのだろうと感じた。説明するのは難しいが、同じ女性としてその感性は信頼できる感じ。
見終わって思うのは、マリーは結局のところずっと一人で戦ってきた女性だったということだ。だからこそ、その生涯がはかなく切なく胸に迫ってくる。最後のヴェルサイユをどんな気持ちで見つめていたのかと思うと、とても切ない。
予告からはかなりポップで異質な映像という印象を受けていたのだが、実際に本編を観てみたら、特にそういう感じは受けなかった。確かにロックなどの現代の音楽がかかったりはするが、それは本質的な問題とはなっていなかったと思う。むしろ、意外と地に足のついた表現で、技法におぼれない撮り方をしているという印象を受けた。その上で、対象との距離感やアングルの独特さが、今までの時代物とは異なる現実感を生み出している。
少女から母となった王妃までを演じ分けたキルステン・ダンストも見事。最初、初っ端から彼女が演じると知ったときは、このオバサン顔でマジかよと思ったのだが、ちゃんと少女になっていて感心した。そして最後には凛とした王妃として終わる、その成長ぶりが観る者にしっかり伝わってきたのは、彼女の演技力ゆえだろう。