探検ロマン世界遺産

エルサレムというとTBSの方でもわりと最近取り上げていたので、これはどうだろうと思いつつ見たのだが、なるほど。こういうのもアリだなあと思わされた。ドキュメント性を強調したつくりと言えばいいだろうか。
TBSだと映像に力を入れているし、30分で遺産の魅力を伝えなくてはならないし、たぶんある程度アーカイブ的な役割も念頭において制作されているから、状況がすぐ変わりそうな近々のニュース的な部分を取り上げるのは難しいだろう(それでも最近は遺産をめぐる問題を取り上げたり、遺産の研究者など人が語る場面も多くなってはいるけれど。番組として社会的な側面も無視できないという方針になってきたんだろうね。昔は、映像に人間の姿が入ることさえ本当にまれだった)。
その点、NHKの方はリポーターが実際に歩いて見て感じたことを伝えるという形式をとっているから、「たった今起こっていること」を伝えやすい。結果、今回の取材中に厳戒態勢がしかれる様子を撮影したり、宗教間の対話の席につこうとしたユダヤ教ラビへのインタビューなどもできたわけだ。
全ての立場を公正もしくは肯定的に伝えるのは難しいと思う。特にこの土地のように、歴史的経緯から被害者と加害者という立場が錯綜し、さらに今現在国際政治的・軍事的な問題が勃発しているところでは。それでも今回、三者三様の歴史的経緯を取り上げ、また、平和主義的なラビと共に、右翼的なユダヤ教徒グループの意見も映像で断罪することなく伝えたことは評価したいと思った。そうでないと状況の複雑さは伝わらないだろうから。
この時期に撮影に行くということは、そういう事態にでくわすだろうことも折り込み済みだったはず。普通なら避けるわな。それなのにあえて行った取材班の心意気には拍手したい。