ガンダム展

その後、仙台メディアテークに行って「GUNDAM 来たるべき未来のために」を観てきた。
ガンダムをテーマに若手*1ガンダム世代)の現代アーティストが製作した作品の展覧会。私は特にガンダムに思い入れがある人間ではない(むしろ、子供時代は兄にチャンネル権を握られて強制的に見せられたせいで嫌いだった)んだが、せっかくやってるんだし観るのも一興かと思って。参加アーティストは会田誠常磐響宇川直宏本秀康八谷和彦等々。まあそういうアレなんですよ。
これから観に行く人には*2、この展覧会ではぜひ音声ガイドを借りて見ることをオススメしたい*3。この手の現代アートはコンセプトありきなので、漫然と見ていると本当に漫然とさらっと見終えてしまうから。私も簡単に見終えてしまってあれっという感じだったんだが、もう一度ガイドの機械を借りて観てみたらこれがよかった。
古谷徹とキュレーターの東谷隆司による会話形式になっていて、古谷氏の疑問に東谷氏が答えるという形になっているので作品解説がわかりやすい。それに、時々古谷氏がアムロの台詞を言ったり、途中でガンダムの音楽やサウンドロゴ*4などが入ったりするのがめっちゃツボ。(笑) 昔何かの展覧会ですごく音の悪いガイドを借りて以来、音声ガイドにはあまりいい印象がなかったんだが、今はこんなおもしろいつくりのがあるんだな。


この展覧会で面白かったのが、フラナガン機関内ニュータイプテクノロジーラボの展示「サイコ・コミュニケーター・システム」。
これは、「ジオン公国ニュータイプにおける人から人への意思伝達を研究開発する際、こんな実験が行われたのではないか」、という前提の元につくられた体験型作品だ。
その内容というのは、二人一組で発信者と受信者に分かれ、発信者は額に電極をつけ、受信者は背中にバッグのようなものを背負って、そこから首筋に電極をつける。そして、発信者には座って身動きをしないように、受信者には立って真っ直ぐ前に向かって歩いてもらう。このとき発信者が眼球を右に動かすと受信者も右の方向に、眼球を左に動かすと受信者も左の方向に歩いていってしまう、というもの。
この作品を出品しているニュータイプテクノロジーは、実はNTTの研究者と八谷和彦の共同チーム。つまり、これはNTTでそういう研究をしている人たちのマジもんの実験装置なのだ。たぶんかなりライトにしてあるのだろうし、特に危険なものではないそうだけど。
人間に電極をつけて意志(と言っていいのかわからないが)を伝えるというのは、こないだNHKでやっていた立花隆の番組みたいでちょっと怖いけどとても興味深い。
この実験には一次試験があって、モニターに表示されるESPカードを2回連続で当てなければ本実験には参加できない*5。私ははずれてしまったので当初はしばらく見学していたんだが、偶然、一人で来ていて一次に合格した女性がペアになりませんかと声をかけてくれたので、急遽発信者として参加できることになった。
いやあ、ドキドキしましたよ。この実験には合う人と合わない人がいるらしく、見ていた限りでは、最初のカップル(彼氏が発信者、彼女が受信者)は劇的なくらいに曲がっていて本人もびっくりしていたようだったが、それ以降のペアのときはそれほど曲がっているようには見えなかったから。でもせっかく参加するからには曲がって欲しいのが心情というもの。
で、実際にやってみたのだが、曲がっていたのかは、うーん、よくわからなかった。(笑) この実験には盲点があって、発信者は眼球を横に動かすから、受信者がどの方向に進んでいるか、自分では見ることができないのだ。受信者を見ようとすると前を見つめてしまうのでそれでは意味がないし。
でも、実験スタッフによれば少し曲がっていたそうだし、実験後に受信者になった女性に聞いてみたら、「きた」のがわかったそうだ。それってどんな感覚なんだろう。すごく不思議だ。



写真は、会場を出てすぐのところにある富野監督の作品。これだけは撮影が許可されていたので。(左は真正面から。右は大きさがわかりやすいように、右の後ろ側から。奥に見えるのは伊東豊雄設計で有名なメディアテークのチューブ構造。中にエレベーターが通ってます。)
もともとの大阪の展示にはなかったそうだが、大阪の展示を見た監督が自分も参加したいと申し出て東京の展示から展示されたらしい。こういうキャラクター展に作者本人が参加するのは異例中の異例なのだそうだが、その理由が、「若い者に負けてられない」かららしい*6というのがらしくていい。(笑)
一見なんでもないでかいフィギュアのようだが、実は中央部にある円形のお盆状のものが赤く塗られていて周りは白いから、上から見ると日の丸に見えるようになっているらしい。主催者はこれが提示されてきたときはかなり「ヤバい」と感じたそうだ*7
これに限らず、日本の美術展ではいわゆる「戦争」の展示はずっとタブーとなってきたが、このように「ガンダム」という架空の世界を通すことによって、ワンクッション置いた状態で「戦争」を語ることが可能になった、というキュレーターの言葉には納得した。まあ、内容はアレなんだけど。

*1:というほどもう若手ではないか。「今旬の」という方が適当かな

*2:大阪、東京、仙台ときて、まだ巡回するらしい

*3:500円余分にかかるけど

*4:ジャーンジャジャジャジャーン、”シャー!”とか

*5:本当の意味での試験というよりは、参加人数を絞り込むためだろうね

*6:トークイベントでキュレーターの東谷氏談

*7:同上