16歳の合衆国

THE UNITED STATES OF LELAND

16歳の合衆国」を観てきた。
少年が元恋人の知的障害者の弟を刺し殺した事件。しかし、彼はとてもじゃないが人を殺せそうには見えない人物だった。彼が収容された施設の教師は彼に興味をもち、彼と話をして、彼が事件を起こした理由と彼について知ろうとする。映画は、彼の語る回想と、被害者加害者双方の家族にとっての事件のその後を描いている。
人物の描き方がいい。少年も、加害者の家族も、被害者の家族も、そして施設の教師でさえも、みなどこか弱さをもっていて、過ちを抱えて生きている。完璧な善人は誰もいない。でもたぶんそれが普通なのだろう。その普通の人たちが、薄い網の目のように緩く絡まりあいながら描かれている。
そこに事件によってできた綻び、そのために起こる事件、そして最後に明らかになる少年にとっての「理由」・・・。
それはとても哀しい話だった。ただ悲劇が哀しかったというよりは、少年がどんな幸せな人を見ても感じるという悲しさが映画から溢れてくるようで、ただただ哀しくてボロボロと泣いてしまった。映画を観てこんなに泣いたのは久しぶりのような気がする。


こんなことを書いている間にも、テレビでは息子が家族を殺したニュースが伝えられている。そんなニュースに、軽い倦怠感と絶望と哀しさを感じる日常。