スチームボーイ

スチームボーイ」を観てきた。
前評判の悪さから期待値をかなり下げていたのでそんなに落ち込むことはなかったし、一応最後まで退屈せずに観ることはできた。が、かといってとりたてておもしろくもない。いや、時代設定もキャラもあの時代の機械の動く様子なんかもかなり好きな感じなんだが。パイプなどの金属やロンドンの町並みの描写も最高。話だって陳腐なところはあったが、設定そのものはそんなには悪くない。しかしそれらの見せ方がよろしくない。いろんな点で惜しいなあと思わされる作品だった。


テンポと構成がよくない。
まず、演出にメリハリがない。もっとためるところはためてじらして見せた方がいいのにと思われるところが多々あったし、逆にもっとスピード感がほしいシーンもあった。実はブラックなシーンも多いんだが、それも効果的に演出されていない。どうも、テンポの悪さでおもしろさのツボをはずしてる感じなんだよな。
また、細かいエピソードの積み重ねで話を構成しているため、全体像が見えにくい。そもそもオープニングに派手なアクションでまず目を引いたら、次にはちょっと目線を引いて世界像を見せるのが定石だと思う。少なくとも、舞台が日本でも現代でもない以上、簡単に説明してみせるシーンは必要だろう。19世紀半ば、イギリスの産業革命期とはこんな時代なのだ、という広い視野からの描写があるだけでも見え方は大分違ってくるはず。世界観はできていても、細部を描くだけでその全体を理解してもらおうというのは制作者の怠慢だと思う。子供に観てもらおうと思うならなおのこと。さらに細かいことをつけ加えるなら、地名も英語で書かれていては子供には読めないだろうから、カタカナで、国名もつけて書くべきだと思った。かっこつけないでさ。


あと問題なのが、声優。
このアニメには本業が俳優の人が声優として多数参加している。宮崎アニメのように脇で少し味を加える程度ならいいんだが、今作では主なキャラクターがほとんど俳優。
声優には声の瞬発力が必要とされる。俳優は表情や体の演技も見てもらえるからいいけど、声優は一音目から声に揺れがあってはいけないのだ。ところがこの作品では、主人公レイ役の鈴木杏、その祖父ロイド博士役の中村嘉葎雄、それに国家の科学者役の児玉清沢村一樹等はその辺りとても微妙な発声と演技。
鈴木杏はこの世代では抜群にうまい女優だと思うし、少年役でがんばっていたとは思うのだが、それでも無理矢理声を出しているところがどうしても気になってしまった。中村嘉葎雄は、口が回っていなかったり声がモゴモゴこもっていてよく聞こえないことも。あんな聞こえにくい声、わざとじゃないよね? アフレコの時点でNGにすべきだと思うんだが、監督が緩いんだろうか。
逆に、斉藤暁寺島進については、観賞後にチラシでキャストを確認するまで俳優の声だとは気づかなかった。それと、スカーレット役の小西真奈美! 実は彼女は予告の段階では鈴木杏よりよっぽど不安材料になっていたんだが、実際に見てみたら、気取り屋でブラックなキャラクターがぴったりはまっていた。あんなにアニメ声がはまっていてうまいなんて。(笑)
まあとにかく、主要キャラの声がもうちょっとましだったらもっと安心して作品が楽しめたのに、と思わずにいられない。


エンドクレジットのバックにその後の話が絵として現れるんだが、これが作品の単純な後日談というよりはそれだけで一本の作品ができそうな話になっているというのはどうなのよ。しかもそっちのストーリーの方が本編よりおもしろそうだ。(笑) 制作者はなんと続編を作るつもりらしいが(借金増やしちゃわないか?大丈夫?>バンダイサンライズ)、たぶんこの話を作るってことなんだろう。
ただ、あの絵は第一次世界大戦っぽく見えたけど、それじゃ時代が違いすぎるよね? 飛行機だってライト兄弟が飛行に成功したのが1903年の話で・・・。そのころにはレイもスカーレットもいい年になっちゃってるよ。この映画に飛行船が登場しているくらいだからその辺は技術の発達速度も歴史も違う世界だと考えればいいんだろうか。