博物館と美術館に行ってきました

makizo2006-11-04

久しぶりに、仙山線に乗って仙台に行ってきた。
普段は高速バスなのだが、この時季の仙山線は紅葉がきれいなので、シーズン中、一度は乗りたい。去年もそういう理由で、ちょうど一年前にこうして乗ったっけ。
確かそのときにも書いたのだが、今の時期の仙山線は、山寺や面白山で乗り降りするハイキング客が多くて、半ば観光列車と化している。だから山形側から乗ると、多くのリュックを背負ったお客さんが面白山までで降りていくので、山形駅の時点でいい席がとれなくても、そこからは大体好きな席に座れるのがいい。ちなみに、進行方向に向いて左側がいい席だ、と思う。面白山近くの峡谷で滝が見られるからね。
紅葉が楽しめるのは作並辺りまでの数十分だが、ただ仙台に行くだけなのにプチ旅行気分が味わえるのはお得だ。


で、今回は仙台で、仙台市博物館宮城県美術館に行ってきた。
一年前は東北大の学祭のクラムボンライブを観に行ったんだった。ちなみに今年はBENNIE Kで、しかもチケットは売り切れらしい。興味ないけど。クラムボンのときは当日券があったなぁ・・・。


仙台市博物館では「大江戸博物図館」、宮城県美術館では「パウル・クレー 創造の物語」展をやっている。この両館は近いので、せっかくなら両方観に行こうと思ったわけだ。ちなみに東北大もすぐ近くなので、博物館から美術館に行く途中、ついでに大学の敷地を通過して学祭の出店を眺めて行ったのだが、あまりの軽薄さにそれ以前の博物館での感動が薄れそうになった。(^^; やはり学祭なんて社会人が行くものではない。


今回観た、仙台市博物館の展覧会がとっっってもよかった。
これは、「江戸時代に描かれた動物の絵」というコンセプトで様々な種類の動物の絵を集めた企画展なのだが、本当に様々な種類、切り口の展示物があって、飽きないし興味が尽きなかった。
入り口入ってすぐにある、伊藤若冲による「白象群獣図」にまず目を見張った。私は別に美術には全然詳しくないので、一般的な知識として若冲は大体こんな絵を描いた人(鶏のとか)という知識があるだけなのだけど*1、この絵はそういう私の浅薄な知識を超越していた。なんと、手書きドット絵なのだ。画面の構図を6000もの小さな四角い点に分解して、それぞれの右と下に影のような線を加えることで、一点一点が浮き上がったような、遠目に見るとスクリーントーンでも貼ったような効果を出している。しかしこれが紛れもなく江戸時代に描かれた日本画なのだ。このすごさといったら。しばらくじっと見つめてしまった。
若冲の絵としては傑作といわれる作品だそうなので、きっと有名なんだろうけど。とにかく、これが一番最初にデーンと、しかしあっさり展示してあるところに、この企画展の本気度を見た気がした。ちなみに、上の絵は、その象図の象の部分だけを切り取ったイメージ。これだけ小さいと、まさかドット絵とは思わんよねえ。
もちろん、そういった高名な絵師による絵の美術的な素晴らしさも感じられるのだけど、美術品としての格よりも、動物の構図であるとか、どう描かれたか、どういう種類が描かれたか、知らない動物を想像で描いていた時代と西洋の知識が入ってからではどう変わったか、など、あくまで動物というコンセプトに従って展示されているので、博物学的、民俗学的にも楽しめる構造になっていた。(その上で、素晴らしい作品に感動もしたけれど。若冲の他には、岸駒の「猛虎図屏風」、円山応挙の「双鹿図屏風」には特に目を見張った。)
しかも、説明書きが簡潔でおもしろい。子どもに見てもらうことを考慮しているからだろう。難しい説明を読まなくても、作品説明にタイトルのようにつけられた文を読んでいくだけで、展示のコンセプトが大体伝わるようになっている。これは巡回展ではなく仙台市博物館独自の企画なのだが、そのせいか、展示の誘導も明解でわかりやすかった。こないだ同館で見たポンペイ展の不自然極まりない誘導や展示順と、同じ館がやっているとは思えない。独自企画だと自由さが出せるからだろうか。仙台市博物館学芸員、やるじゃん。


仙台市博物館のものも多かったとはいえ、個人蔵や寺収蔵の作品も多く、このような作品がこういうコンセプトで集まることはもうないはず。これは図録は是非買わねば!と思ったのだけど、会場を出てみたら、売場がない。不思議に思って館員の人に聞いてみたら、なんと、図録は昨日で完売してしまったのだという・・・。ショック。
図録じゃ増刷もないしねえ。一見地味な展示だし、最終日一日前の土曜だというのにそれほど混んでもいなかった*2のだが、それだけ、見たら欲しいと思う人の多い、おもしろい展示だったということなんだろう。

*1:今年のサマソニに行ったついでにプライスコレクション観に行けばよかったなあ・・・。

*2:おかげで快適に見られてよかったが