華岡青洲の妻 最終回

いろいろあったけれどこれでよかったのだ、と、今までの日々や姑との関係をある意味美化して自己完結してしまっている加恵に対して、ずっと第三者であった小陸が「あねさんは勝ったからそういうことが言えるんだ」とずばり核心を突いてしまう。そして、自分は嫁に行かずにすんで幸せだったと。
争っていた姑も亡くなり、今は高名な医者の妻という自分の居場所ができた。そんな終わりにさしかかった物語を、この言葉が一気にひっくり返してしまった。嫁姑の争い、人体実験等々あったけれど、このドラマが一番描きたかったのは、そうやって翻弄される女の哀しさだったのだ。
光を描きつつその影を浮き彫りにする原作?脚本?恐るべし。演出も文句なし。
ラスト、現代に残る、於継と加恵、そしてその倍以上大きい青洲の墓のカットを見ていたら、自然とはらはらと涙が流れてきた。本当にいいドラマだった。
小田茜が素晴らしかった。今回は登場シーンでも、今までの回よりどことなく色気のある老け演技になっていて、お、これはと思わされたのだが、和久井映見との二人のシーンでは、鬼気迫る演技で見ていて鳥肌がたつ気がした。彼女はいつのまにかいい女優になっていたんだなあ。
そして谷原章介も。厳しい目で見ればまだまだと思える部分もあるけれど、丁寧で上品で、とても惹きつけられる演技だった。これからもいろんな役に挑戦して経験を重ねていってほしい。この先が本当に楽しみな俳優だ。できれば時代劇もコンスタントにやっていってほしいな。